黄斑円孔とは
眼には網膜という内側一面に貼りついた神経でできた膜があり、カメラでいうとフィルムの役割を果たしています。眼の中に入ってきた光を感じ取るための網膜には、感度の高い部分があり、そこが黄斑です。黄斑では、網膜の他の部分より、物をはっきり、鮮明に感じ取ることができます。
黄斑円孔は「見る」機能の中でも、もっとも重要な部分に孔が開く病気です。男性より女性の発症率が高く、60歳以上の発症が多いという傾向があります。
黄斑円孔の症状
主な症状
初期症状では、物がゆがんで見えたり、視力の低下が起こります。進行につれて見えにくい場所が広がっていき、視力が低下していきます。文字を読むなど、しっかり見ようとする時に使う部分ですから、よく見ようと思う部分がうまく見えなくなるので、さまざまな支障が生じます。そのほかの部分の見え方には変化がなく、痛みなども伴いません。通常は片目に起こりますが、両目に黄斑円孔が起こることもまれにあります。
黄斑円孔の原因
眼球を満たしているゲル状の硝子体は、網膜にぴったりくっついていますが、それが引っ張られて中心である黄斑に孔が開きます。孔ははじめ小さく、徐々に大きくなっていきます。なぜ引っ張られるのかといったことはまだわかっていません。
黄斑円孔の治療方法
硝子体を切除することで引っ張る力を無くし、特殊な気体を注入して網膜を押しつけて黄斑円孔を閉鎖する手術を行います。局所麻酔を眼球のうしろに行いますので、手術中の痛みはありません。手術の所要時間は30分~1時間が目安です。
手術後の注意点
術後の姿勢
気体による圧力で黄斑円孔を閉鎖するため、手術後には気体が黄斑円孔の部分に当たる姿勢を取る必要があります。後頭部を頂点にすることが重要ですので、うつむきの姿勢をできるだけとるようにしてください。3日~1週間、この姿勢を取ることで、良好な手術結果を得られます。
黄斑円孔手術の合併症
手術にはどんな手術でも必ず合併症が起こる可能性があり、黄斑円孔の手術も例外ではありません。
白内障は、黄斑円孔の手術の合併症として50歳以上の方に起こります。進行スピードには個人差があります。白内障は濁った水晶体を人工の眼内レンズに取り替える手術で治せますので、見え方が日常生活に支障をもたらすようになったら手術を検討します。
頻度が低くまれな合併症には、網膜剥離・術後高眼圧・術後眼内出血・感染症があります。
手術後の視力について
黄斑円孔を早期に発見し、進行していないうちに手術を受けることができれば、それだけ閉鎖率も高く、視力の予後も期待できます。
近年報告されたデータでは、手術を受けた約9割の方の黄斑円孔が閉鎖し、約6割の方に視力向上が見られたとされています。また、まれですが術後、視力がさらに低下するケースもないわけではありません。そして、視力の予後は、熟練した眼科専門医でも予想が不可能です。
手術で孔が閉鎖できなかった場合、再手術、あるいは再び気体を注入してうつむきの姿勢を保っていただくケースもあります。
黄斑円孔は進行するに従ってどんどん視力が落ちていく可能性はありますが、完全に失明することはありません。眼科専門医に相談し、リスクをしっかり理解した上で、納得できる治療法を選択してください。