なんとなくぼやけて見えたり霞がかかったように見えたり、普通の景色がまぶしく見えたりする。疲れているだけ……と思いたいところですが、それは白内障やぶどう膜炎などの病気の症状かもしれません。また、近年、患者数が増えているドライアイや眼精疲労かもしれません。視界がぼやける、白く濁る、まぶしいと感じる病気について説明します。
白内障
白内障はおもに加齢に伴って水晶体が白く濁る病気です。視界が白く濁る、ぼやける、かすむ、二重に見えるなどの症状があらわれます。80歳を超えるとほとんどの人が白内障の症状を持っているといわれています。加齢のほかに、アトピーや糖尿病、放射線や薬剤によるものなどがあります。
白内障の症状
発症すると、視界が白っぽく霞がかかったように見えたり、光をまぶしく感じたりするようになります。また、ピントが合わせにくくなり視力の低下を引き起こします。
白内障の原因
加齢によって水晶体が濁ったり硬化したりすることが原因です。生活環境で浴びる紫外線などの影響で活性酸素が発生し、水晶体内のタンパク質を酸化させて濁らせるといわれています。アトピーや糖尿病、治療薬などによって引き起こされる白内障もあります。このケースでは若年層でも発症することがあります。
白内障の治療
白内障は発症すると薬で進行を遅らせることはできますが、視力を回復させることはできません。軽度の場合には、点眼を行って進行を抑えます。
一度濁った水晶体を現在の医療では再生することはできません。したがって、生活に支障をきたすほどの白内障の場合は水晶体を取り出し、代わりに眼内レンズを挿入する手術しか治療の方法はありません。(白内障の日帰り手術)
角膜を切開し、超音波装置で水晶体を乳化させて吸引除去します。水晶体の代わりにアクリル系樹脂やシリコンでつくられた眼内レンズを挿入します。施術は10〜30分程度で日帰り手術が可能です。
ぶどう膜炎
ぶどう膜とは、脈絡膜、毛様体、虹彩の総称として使われる言葉です。眼球全体を被っていて、色がぶどうの実に似ていることからぶどう膜と呼ばれます。
ぶどう膜炎とは、眼球内部に炎症を起こす病気の総称です。ぶどう膜には血管が多く、眼球内に栄養を運ぶ役割を担っています。その血管を通して全身のさまざまな臓器に起こった炎症が影響して、眼にはぶどう膜炎として症状が出ると考えられています。
また、免疫異常が原因となって発症することもあります。
ぶどう膜炎の症状
ぶどう膜炎では、炎症性の細胞が前房(角膜と水晶体の間)と硝子体の中に入り込みます。そのため、ものがかすんで見えたり、まぶしく見えたり、視野に黒い影が飛んで見えたり(飛蚊症)します。眼に痛みを感じたり、充血することがあります。症状の出方もさまざまで、片目にしか出ないこともあれば、両目に出ることもあったり、悪くなったりよくなったりを繰り返すこともあります。
ぶどう膜炎の原因
ぶどう膜炎の原因としては、全身の免疫異常で起こるサルコイドーシス、原田病、ベーチェット病が多かったため、これらの病気が「日本における三大ぶどう膜炎」といわれていたこともあります。ほかに細菌性のもの、ウイルス性のもの、真菌や寄生虫によるものなど、さまざまな要因が考えられていますが、原因疾患が分からないままぶどう膜炎と診断されている人も3分の1ほどいるようです。
ぶどう膜炎は合併症として白内障、緑内障、黄斑浮腫、黄斑変性などを引き起こして、重篤な視力障害に至ることもあります。
ぶどう膜炎の治療方法
眼科の一般的な検査だけでは診断がつかないケースもあり、眼科検査のほか、眼の組織採取を行ったり、眼科以外の症状も合わせて調べるために全身検査を行ったりする場合があります。
原因が病原性の微生物であることが分かれば、それらに有効な薬を処方する内科的治療が行われます。ただ、多くのぶどう膜炎では根本治療が難しく、炎症を抑えて視力の低下を予防することが治療のおもな目標となります。また、一度は治まっても再発することも多く、定期的に眼科を受診する必要があります。
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ドライアイ
ドライアイとは、「ドライアイは、様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある」ものとされています。つまり、涙が原因となって眼の表面に起こる病気です。眼を保護している涙が量的に足りなかったり、涙が質的に変化して充分に眼を潤すことができずに眼の表面に傷がついてしまったりします。
ドライアイの症状
乾燥した眼は表面に傷がつきやすく、角膜や結膜にも炎症が起きやすくなります。まばたきしても乾いた感じがして、ゴロゴロとした異物感を感じたり、眼が疲れやすくなったり、ものがかすんで見えたりします。
ドライアイが進行した場合、視力の低下が起こり、痛みを感じるようになります。また、角膜が乾燥して剥がれてしまう角膜上皮剥離を起こすことがあります。
ドライアイの原因
ドライアイの原因はさまざまですが、現代人の生活がドライアイのリスクを高めていることは否定できません。原因として考えられているのは、
・エアコンで乾燥した室内環境
・スマホやパソコンの画面の凝視
・夜更かし
・コンタクトレンズの使用
・花粉症
などです。
乾燥した室内で、とかく眼を酷使しがちな現代人にとって、ドライアイは身近なリスクとなっています。患者数は年々増加の一途を辿っており、日本で2,200万人もの人がドライアイに悩んでいるといわれています。
眼に涙を行き渡らせるのはまばたきです。パソコンやスマートフォンなどの画面を凝視しているときは、通常の4分の1程度にまばたきの回数が減っています。その結果、ドライアイを招きやすい状態になっています。
ドライアイの治療方法
ドライアイの治療は、点眼薬を用いる方法と、涙点閉鎖を行う方法、マイボーム腺機能不全治療の大きく3種類があります。
ドライアイ用点眼薬は涙に近い人工涙液です。涙と同じ浸透圧を持っていて水分補給を行います。涙に含まれるムチンを生産する成分を含む点眼薬(レパミピド)もあります。ムチンや水分が十分になると、涙がなめらかに眼球表面を覆うようになり、角膜の傷の修復、ドライアイの改善につながります。
涙店閉鎖は、シリコンや合成樹脂などからできているプラグで涙点を塞ぎます。分泌された涙はまぶたの鼻側にある涙点(るいてん)から排出され、鼻腔内に流れていきます。涙の排出口である涙点を塞ぐことで、涙を目に留めさせます。
眼精疲労
長時間のパソコン作業やスマホ使用、運転などで眼を酷使したり、乾燥した環境下に長時間いることで眼が乾いた状態になったりすると、眼に大きな負荷がかかり、違和感や肩こり、頭痛などを感じるようになります。これは眼精疲労の症状です。
眼精疲労の症状
眼の奥が重い、眼がゴロゴロする、ものがかすんで見える、焦点が合いにくくなるなどの症状が現れることがあります。ひどくなると頭痛やめまい、吐き気などをもよおし、肩こりや手足のしびれ、倦怠感を感じることもあります。
眼精疲労の原因
原因として指摘されているのは眼の酷使と乾きです。
長時間のパソコン使用やスマホ利用、緊張を強いられる長時間の運転などは眼に大きな負担がかかります。同じ画面を凝視することが多く、眼の焦点を合わせる筋肉の動きが悪くなります。
また、何かを凝視しているときには同じ姿勢をとり続けることが多く、眼筋の緊張が首や肩、背中、腕などの筋肉にも緊張が広がっていき、肩こりや頭痛の原因となります。
眼の乾きも大敵です。長時間のパソコン使用やスマホ利用でまばたきが減少します。眼球表面の潤いが失われて、視界がぼやけたり、かすんだりします。
眼精疲労の治療
眼に負担がかかる長時間の作業をする際には、適宜休憩を挟むことが重要です。また、違和感を感じていたら、蒸しタオルなどで眼の回りを温めましょう。血液循環が促進されて、眼の疲労回復に効果的です。
眼精疲労について詳しくは >>