結膜炎とは
結膜がまぶたの裏側と眼球前方表面をつなぐ薄い粘膜で、目を自在に動かしながら、異物が眼球の奥まで入らないように守る役割を持っています。ただし、いつも涙で濡れた状態の粘膜ですから、細菌やウイルスの増殖に適した環境であり、袋状の構造をしているので異物が溜まりやすくなっています。そのため、結膜は感染による炎症やアレルギーを起こしやすく、結膜炎は眼科診療で一番多い疾患です。
結膜炎の種類と治療について
さまざまな結膜炎があり、それによって治療方法やリスクがかなり違います。そのため、充血や目やに増加など軽い症状しか現れていなくても念のために専門医による正しい診断を受けることと、人にうつさないため注意点をしっかり実行することが重要になってきます。
感染性結膜炎
細菌性結膜炎
インフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などが原因菌となります。治療は、抗菌の点眼薬を使用して行います。
流行性角結膜炎(はやり目)
アデノウイルスが原因の結膜炎です。症状が現れるのは感染後1週間前後で、発症して10日程度で症状が軽くなっていきますが、3週間かかる片もいます。
充血や腫れ、痛みがあり、他の結膜炎よりやや強い症状が現れます。他に黒目の部分に濁りが出る場合があり、ほとんどは自然に消えていきますが、消えるまで視力低下が起こる場合があるので注意が必要です。また、この結膜炎の症状が強いと、後遺症としてひどいドライアイや結膜の瘢痕などが起こることもあります。
クラミジア結膜炎
以前は『トラコーマ』と呼ばれていた、クラミジアトラコマティスによる感染症です。結膜だけでなく角膜の炎症が起こる場合があるため、視力低下の危険性もあり、失明原因のひとつにもなっています。クラミジアは生殖器に影響を及ぼす場合もあり、性交渉や出産時に産道で感染する場合もあります。
抗生物質による治療が有効ですが、病原体を除去するためには数か月の服用が必要になります。途中で服用をやめてしまうと耐性菌ができて治りにくくなってしまいますので、必ず医師の指示を守って服用してください。またパートナーの診療や治療も不可欠です。
赤ちゃん・子どもの結膜炎
赤ちゃんの結膜炎は、出産時の産道感染や涙のう炎が原因となっている場合がほとんどです。
涙のう炎が原因の結膜炎であれば、涙が鼻の奥に吸収されるための通り道である鼻涙管〈びるいかん〉が完成していない可能性があります。完成していなかった場合には、それを開放するための手術を行って、点眼薬の治療を行います。
赤ちゃんに目薬をさすのがかわいそうで忍びないと躊躇するお母さまもいらっしゃいますが、乳児期は目でものを見る機能が発達する重要な時期ですから、目薬をきちんと点眼して早く治してあげることがとても重要です。治らないままでいると視力の発達ができず、弱視になってしまう場合もあります。目をつむっている時に点眼しても、眼頭にさすことで薄目を開けた瞬間に目薬が目に入っていきます。赤ちゃんのためを思うなら、ためらわずしっかり目薬をさしてあげてください。
子どもの結膜炎では、成人の結膜炎より強い症状が現れることが多いのですが、成人と治療方法は変わりません。まぶたの裏に白い偽膜ができたり、出血したりなどでご心配されるかと思いますが、きちんと治療を受けていれば心配いりません。
アレルギー性結膜炎
結膜炎には人にうつらないものもあります。それがアレルギー性結膜炎です。春から夏にかけて悪化しやすい春季カタルもアレルギー性結膜炎のひとつです。
アレルギー性結膜炎とは
異物が侵入してきた時にそれを排除しようとする仕組みが人体には備わっています。それが免疫機能です。アレルギーは、この免疫機能が必要以上に敏感に反応し、害のないものまで排除しようとすることで起こります。アレルギーの原因は、歯分、ダニ、ペット、ハウスダスト、化学物質から、果物や穀類、魚といった特定の食べ物などまで、さまざまです。
症状について
結膜の充血や目やに、涙目、痒み、まぶたの腫れなどが代表的な症状です。鼻のアレルギーを併発するケースもとても多くなっています。
治療方法
アレルギーを起こす原因が分かっている場合には、できるだけそれにふれないようにするだけで症状が大きく改善する場合もあります。代表的なアレルギーを起こす物質については検査で確かめることができます。治療は、アレルギーを抑える点眼薬を中心に、炎症を抑えるステロイドの点眼薬などを使用する場合もあります。
春季カタル
『カタル』は粘膜の炎症を指す言葉で、春季カタルは春から夏にかけて悪化しやすいアレルギー性結膜炎です。粘膜だけにとどまらず、角膜の炎症や潰瘍を起こす可能性もあるため、注意が必要です。アトピー性皮膚炎がある子どもがなりやすく、成人するまでにほとんどが改善します。
結膜炎の合併症
結膜炎は眼球の手前を守る粘膜に起こる病気です。悪化しても眼球自体に影響が及んだり、失明するケースはほとんどありませんが、合併症により視力に影響が及ぶ可能性があります。結膜炎は昔から知られたありふれた病気ではありますが、甘く見ず、早めに専門医を受診し、しっかり治すようにしましょう。
混合感染
混合感染は、違う細菌やウイルスによって新たに別の結膜炎に感染することです。結膜炎になると感染防御機能がうまく働かなくなるために感染しやすくなって起こります。
角膜混濁
粘膜と角膜の表層部分はよく似た性質を持っているため、悪化した結膜炎で角膜に混濁が起こることがあります。混合感染では、角膜が濁って視力に障害が残る可能性もあります。
ドライアイ
粘膜の炎症が悪化すると、治ってからも涙の分泌が少なくなるなどが起こる可能性があります。これによりドライアイのリスクが高まります。
結膜炎をうつさないために
結膜炎は感染力が強いものがありますので、人にうつさないために注意が必要です。特に乳幼児は視機能を発達させる重要な時期です。この時期にはっきり見ることができないと、視機能がうまく発達しない場合も考えられます。他人だけでなく、家族同士でうつしあうことがないようしっかり注意しましょう。
1.こまめに手を洗いましょう
石鹸を使い、水道水の流水でよくすすぎます。洗った手はペーパータオルで丹念に水気を取り、使用したペーパータオルは必ず捨ててください。患者さまだけでなく、一緒に住んでいるご家族もこまめな手洗いを行う必要があります。
2.目に触れない
結膜炎に感染している目周辺に触れて、その後、物に触れると、そのものが感染源になりますので、極力目周辺に触れたり、こすることはやめましょう。そしてもし触れてしまった場合には、手をしっかり洗ってきれいに水気を取りましょう。
3.洗濯物は別々に
患者さまの衣服やシーツ、タオルなどは他のものといっしょに洗濯機で洗わず、別に手洗いし、日光にしっかり当ててかわかしてください。
4.お風呂は最後に
入浴は症状が軽くなってからでしたら可能ですが、患者さまは最後に入浴し、お湯は必ず捨てましょう。洗面器などは熱湯で消毒して、浴室自体の掃除も丁寧に行ってください。
5.目薬は結膜炎症状のある目だけに点眼
目薬をさす時に、容器の先がまつ毛に触れてしまうことがよくあります。気付かずに増えている場合もあります。結膜炎にかかっていない方の眼にも点眼してしまうと、こうしたことによって関S年が起こる可能性があります。かかっていない目には点眼せず、液が流れていかないようご注意ください。
6.学校やプール
眼科医の許可が出るまで学校もプールもお休みします。特に、プールは結膜炎が治った後もしばらく禁止期間が続きます。